2024年4月15日月曜日

専修大学寄付講座「実践知としてのワークルール入門」を毎年開講しています(弁護士林裕介)。

 専修大学で、寄付講座「実践知としてのワークルール入門」を毎年開講しています。
 
 この講座は、当団体に所属、関係する弁護士、労働組合員、社会福祉士など、各分野の専門家が講師となり、実際に経験した事例などをあげながら、単なる知識でなく、今日からでもすぐに利用できるような形でのワークルール(労働法)の習得を目指すものです。

進め方としては、ケーススタディやグループワークなどを重視しています。働き方やその改善方法などについては、必ずしも1つの正解があるわけではないので、皆で意見を出し合い、そして考えながら、楽しく実施しています。

当団体の活動は、このようにワークルールを一緒に学ぶ、ということを柱の1つとしています。これは、自身の働き方に少しでも違法・不当な点がある場合に、まずはその違法性・不当性に気づくことができるようワークルールの知識を身につけていることが重要だと考えているからです。

このようなワークルール関係企画は、専修大学寄附講座以外にも実施していますので、改めてみなさまにご案内したいと思います。

2024年2月12日月曜日

雇用形態の違いによる格差を無くそう

 

 昨年から「シュウマイの崎陽軒」の駅売店で働く組合員の賃金、一時金、労働条件・労働環境改善の交渉をはじめました。

 組合員は、十数年前から非正規雇用で働き、数年前に無期雇用になりましたが、一昨年まで賃上げ無しで、昨年初めて賃上げが有りました。昨年の年末一時金(ボーナス)は7万円でした。フルタイムで3日間の交替勤務(早出、遅番、休日)で盆休みや正月休みも無しで働いています。雇用形態の違いでこれほどまでの賃金格差が生じています。ただこれが、崎陽軒だけ特別とは 言えない現状があると思います

 また、無期雇用契約は雇用が確保されるだけで、フルタイムで働いていると「パートタイム・有期雇用労働法」が適用されないと言われています。

 こうした不合理を無くす為に、行動していきましょう。

 

JMITU川崎支部 細谷

2023年11月7日火曜日

メーデー要求交渉

 

去る7月31日にメーデー要求交渉を川崎市と行いました。

多岐にわたるメーデー要求にもかかわらず、川崎市は交渉時間を感染対策を理由に1時間とし、内容についても制限をかけようとする対応をしました。そのことについて全く納得のいくものではありませんが、労働者の諸要求を伝える場を無くしてはならないため、今年は交渉時間の制限のある中で行いました。

実行委員長として交渉の冒頭には概ね以下のように挨拶を行い、交渉を行いました。

 

「メーデーは皆さんのご存じのように、労働者の労働環境の改善、権利の獲得のための祭典です。労働者はメーデーに諸要求を持ち寄り、その実現のための具体的行動を起こします。

さて、この度のメーデーで持ち寄られた諸個人・団体の要求は今日この場において今一度確認をしたいと思います。いままでもメーデー要求としてあげられた、労働者・市民の声を受け止め、市政に活かし、よりよい川崎市の実現に向けた取り組みをされていることに敬意を示します。それは形式的なものではなく、私たち労働者・市民一人ひとりの生活に目を向け、声に耳を傾け、変革に邁進されてきた皆様の実践であると思います。私たち川崎の労働者、市民は皆さんがより良い市政を行うことで、私たち自身の安心して暮らせること、生活が容易に脅かされないことを求めたいと思います。そのために日々、私たち労働者、市民の声によく耳を傾け、労働者、市民の生活の向上に資するお仕事にまい進されている皆さんに、改めて私たちの要求について耳を傾けてほしいと思います。また日々どのようにしたらこの川崎の市民の暮らしはより良いものとなるのか、悩まれている皆さんのお仕事のきっかけとして、私たちの声に耳を傾けてほしいと思います。

今日ここに持ち寄られた様々な要求、多岐にわたる要求こそ、人間は多様な側面を有し、かつ固有の尊厳を有していることを示しているように思います。そして、人間の生活は多様な社会的なリソースによって支えられ、脅かされうることを示しているように思います。今日ここで挙げられる、どの要求にもそれぞれ重要な価値が含まれていること、それはそれぞれの市民の声であり、それぞれの労働者、市民の生活からの訴えであることを受け止め、今後のよりよい市政の取り組みをしていっていただきたいと思います。」

 

私たち労働者の祭典メーデーは来年も私たちに開かれています。

川崎市との交渉のあり方については方法や内容の工夫を行いながらも、その効果が最大化されるように今後も行います。またそのためにもより多くの仲間と共に取り組み、運動をより大きなものにしていかなくてはならないと思っています。現在繋がり合っている仲間と共に、これから出会う仲間と共に、連帯をより広げていくことが一に求められます。この苦難な時代にこそ共に声を挙げ、要求の実現をしていきましょう。

 

川崎労働者組合総連合議長・第94回川崎メーデー実行委員長 児玉桃太郎

2023年4月13日木曜日

「マタハラ」は,違法! 泣き寝入りをせずに,ご相談を!!(弁護士山口毅大)

 みなさん、「マタハラ」は、ご存じでしょうか。「マタハラ」とは,マタニティハラスメントのことで一般に,妊娠・出産に伴う労働制限・就業制限・産前産後休業・育児休業によって業務上支障をきたすという理由で,精神的・肉体的な嫌がらせを行う行為のことを指します。①妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い,②妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント(制度等の利用への嫌がらせ型,状態への嫌がらせ型)という整理がなされています。このようなマタハラは,民法,労働基準法,労働契約法,男女雇用機会均等法,育児・介護休業法等に反するもので,違法です。

 数年前よりも、だいぶ「マタハラ」が知られるようになってきました。ですが、今もなお、「マタハラ」が横行している現状があります。

 実際に、労働者が、産休、育休を取得すべく、使用者に連絡していたものの、出産後、解雇されていたということが発覚したというケースがありました。LINEのやりとり、録音等の証拠があったため、使用者がマタハラをしたとして、使用者の法的責任が認められました。このように,会社とのやりとりは,メール,LINE,録音などによって,きちんと残して置くことが大切です。また、退職するつもりがなく、法的責任を追及する場合には、安易に退職届を出さないようにしましょう。さもないと、就労の意思がない、退職することについて合意があった、適法に退職がなされたということにもなりかねません。

 「マタハラ」は,違法ですので,泣き寝入りをせずに,ぜひお気軽に弁護士や労働組合にご相談ください。

2022年6月20日月曜日

エッセイ(藤井光子)

 ★ロシアによるウクライナ侵略が始まって4か月弱が過ぎ、痛ましい戦争の現実に胸が潰れる思いですが、国連やEUなどのニュースを見ていると驚きます。北欧4カ国フィンランド、スウェーデン、デンマーク、アイスランドの首相は女性です。ノルウェーも昨年まで女性首相。★さらに、ニュージーランド、のアンダーソン首相は在任中に妊娠・出産をしながら首相を務めている人です(世界初)。ウクライナの状況を伝える各国首脳や報道官として登場する女性のなんと多いことか!存在感を発揮しています。ドイツのメルケル首相だけではなかったのだ…と今更ながら驚くのです。★比べて日本はどうでしょう? 日本の女性議員比率はなんと世界で166位/9.9%(衆院)。ジェンダーギャップ指数は120位/156カ国中という低さ。「女性活躍」と、かけ声は美しいけれど政府与党の顔ぶれはほとんど男ばかり。女性の姿を想像することも難しい。★非正規雇用で働く女性は男性の3倍、男性と女性の生涯賃金格差は1億円!★ニュースを見ながら改めて気づく日本のジェンダーギャップ。女性議員も増やさなくては…。

特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律の施行とその概要、相談先について(弁護士山口毅大)

2021年6月9日、議員立法により「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、2022年1月19日に完全施行されました。

 法の趣旨において、石綿にさらされる建設業務に従事した労働者等が、石綿を吸入することにより発生する疾病にかかり、精神上の苦痛を受けたことについて、最高裁判決等において国の責任が認められたことに鑑み、被害者の方々へ損害の迅速な賠償を図る旨が述べられています。

当法人に所属する弁護士も建設アスベスト訴訟弁護団の一員として、最高裁判決を勝ち取りました。

給付金制度、相談先の詳細は、こちらのURLをご覧ください。

建設アスベスト給付金制度について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

建設アスベスト訴訟全国弁護団 (asbesutos-syutoken.com)

2022年4月5日火曜日

米アマゾンでの労働組合結成(兵頭淳史代表理事)

 

 発生から2年が経過してなお収束しないCOVID-19パンデミックと、ロシア・ウクライナの戦争が、世界のニュースを席捲し続けていますが、そんななか、労働の世界において注目すべきニュースがアメリカから飛び込んできました。米国発の多国籍通販企業アマゾンの米国内事業所で初めて労働組合が結成されたというニュースです。

 4月1日、ニューヨーク市スタテン島のアマゾン物流拠点JFK8で、組合承認の是非を問う投票の結果、賛成多数で組合結成が承認されました。これにより、米国内のアマゾンに初めて団体交渉権をもつ労働組合(Amazon Labor Union)が生まれることになったのです[1]

  アメリカでは原則として、全米労働関係委員会の管理の下で、当該事業所で働く労働者による投票が行われ、その結果過半数の支持を得ることができなければ、団体交渉権をもつ労働組合は存在できない制度になっています。そして、アマゾンのような有名企業も含め、少なからぬ企業の経営陣は徹底した反労働組合姿勢をとっており、その企業で労働組合結成の動きが起これば、この組合承認選挙で反対票が上回るよう様々な対抗策を講じます。アメリカの労働組合組織率が非常に低い(10%程度)のは、事業所に労働組合を結成しようとする動きの前に立ち塞がる、こうした制度的な壁と、経営者の反組合姿勢の現れとも言えます。どんな少人数でも団体交渉権をもつ労働組合を結成することができ、経営者は、極少数のからなる労働組合であっても団体交渉に誠実に応じる義務が生じる日本との大きな違いです。他方で、アメリカの労働組合が、日本の労働組合と比較したときなど、非常に活発で戦闘的なのは、このような厚く高い壁を乗り越え結成されるというプロセスとも関係するのかもしれません。

いずれにせよ、新自由主義的グローバリズムの象徴であり、現代的低労働条件・不安定就労の象徴でもあるアマゾンの「本家」において戦闘的な労働組合が出現したことの、全米、そして世界へのインパクトはきわめて大きいと言えるでしょう。米国アマゾンにおける労使関係の今後には大いに注目したいところです。

そして同時に、私たちは自らの足元・日本においても、この市場を席巻する「便利な」巨大物流拠点で働く人たちの状況にあらためて目を向けてゆく必要があります。この国でも、彼/彼女らこそ、労働組合や労働相談を通じた問題解決や条件引き上げを、客観的には最も切実に必要としている労働者であろうと思われるからです[2]



[1] ただし、44日付の報道では、アマゾン経営者はこの投票結果について異議を申し立てる意向とのことであり、正式な組合承認はこの異議申し立てが却下された後になる可能性がある。

[2] 横田増生『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』朝日文庫、2010年など参照。